SSブログ

家にかける予算 [これから建てる人のために]

 これから家を建てようと思っている人にとって、家に幾らかけるのか、これは非常に重要な問題だと思います。



 言うまでもありませんが、住宅ローンを組むということは、非常に多額の負債を抱えるということです。

 借金には通常担保が必要で、住宅ローンの場合は新築した家と土地になります。

 新築の家といえども、一旦住んでしまえば中古物件となり、そのリセールバリュー(=担保価値)は取得価格より大幅に小さくなります。

 築10年もすれば上物(家)の担保価値は殆どなくなり、担保価値=土地代となってしまいます。

 取得価格は同じでも、土地が安くて建物が高い物件より、土地が高くて建物が安い物件の方が担保価値が高くなるのです。



 ローン限度額を物件の担保価値とすると、借入額は土地代金までとなります。

 しかしこれでは、上物の価格と等しい金額を頭金として用意する必要がありますし、ローンを土地に適用することができませんので、利用できる人は非常に少なくなってしまいます。

 そこで住宅ローンに保証会社なるものが介在します。

 これは銀行にとっての保険のようなもので、債務者が住宅ローンを支払えなくなった場合、保証会社が住宅ローンの残額を一括して銀行に支払うものです(代位弁済)。

 そうすれば銀行にとってリスクは無くなり、担保価値以上の貸し出しができます。ローン手数料の中の保証料が、保証会社に支払う代金です。

 この保証制度によって、住宅ローンは広く普及しました。

 もちろんローンを支払えなくなったら保証会社が残債を代わりに払ってくれて、債務が無くなる訳ではありません。

 債権者が銀行から保証会社に代わるだけです。

 大抵の場合、延滞が6カ月を超えると分割払いの権利が喪失し、代位弁済の手続きが取られるようです(銀行も冷たいものです)。

 保証会社は担保物件(債務者の家と土地)を競売にかけ、肩代わりしたローン代金に充てます。

 家と土地を手放すのはもちろん、落札額が残債より小さければ債務が残り、支払いを続けなければなりません。



 住宅ローンのリスクは、担保価値以上の負債を背負うことにより、支払いができなくなった時点で何もかも失い、場合によっては自己破産に至るという点なのです。

 延滞歴などのある住宅ローン破綻予備軍は全国で100万件あるとも言われています。

 住宅ローンが破綻する確率については旧住宅金融公庫などからもデータが公表されていませんので不明ですが、保証会社の保証料は借入金額の2%程度です。保証料の半分は保証会社の経費や利益に充てられると考えると破綻の確率は約1%。しかしローンが破綻したとしても、それまでの支払い額や競売によって回収した額がありますので、借り入れ金額の全額が回収不能になる訳ではありません。その程度は不明なのですが、半額程度は回収されるとすると、破綻に至る確率は約2%(50人に一人)となります。

 また、ローンが支払えなくなっても、幸いなことに物件の価値が残債額を上回っており、売却することによって破綻に至らない例もあると思いますので、ローンが支払えなくなる確率はもう少し上がるでしょう。

 逆に保証会社による保証を必要としないくらい収入が安定している(または借入額が小さい)借り主も多くいるでしょうから、これらを母集団に加えるとローンが支払えなくなる確率は下がります。

 2%という数字はちょっと大きすぎると思います。実際には1%程度でしょうか。データが乏しいので何とも言えないところです。




 確実に言えることは、

 保証会社や銀行の審査による貸し出し上限額と借入金額が近いほど、破綻の確率が高くなる

というとです。






 どのような住宅ローンを選ぶかも重要です。トータルとして見れば変動金利や短期の固定金利(その後は変動金利)の方が、フラット35などの長期の固定金利より金銭的には有利になるとは思います。

 しかし変動金利の場合、金利の上昇により月々の返済額が一気に増える危険性を孕んでいます。当初の金利の低い期間は順調に返済できるとしても、金利の切り替え時に月々の返済額が限度額上限までアップしても返済できるかどうか、慎重に検討しなければなりません。

 ボーナスも保証された収入ではありませんから、ボーナス払いは併用しない方が賢明です。余裕ができれば繰り上げ返済に充てれば良いのです。






 こういったリスクをなるべく軽減するためにはどうしたら良いか。



 自分たちが将来にわたって無理なく支払える金額から、借入額を算出することです。

 住宅取得後の維持費や固定資産税、将来の教育費、当座の生活費の確保なども考慮に入れる必要があります。

 例えば子供の教育費。

 残念ながら現在の公立小・中学校の授業のレベルは一部を除いて高いとは言えず、受験を意識するのなら塾通いは必須です。

 例えば二人の子供を塾に通わせると、春・夏・冬の特別講習時には支払いが月に十万円を超えるでしょう。

 さらに私立の中学・高校・大学に進学した場合は年間百万円以上の負担増となります。

 子供さんが既にいる場合、将来的な給与増は教育費に相殺されると考え、現在の支払い可能水準でローンの返済額を考えるのが無難です。


 また、延納が6箇月続くと家と土地を手放さなくてはならなくなります。リストラや病気に備えて、半年分程度の生活費を手元に置いておくことも大切だと言われています。



 こうして考えると、「家を買わないこと」も立派な選択肢の一つです。



 家賃を払うくらいなら同じ支払金額でローンを組んで住宅を購入した方がトクだと聞くことがありますが、借入金額が担保額を大幅に上回っているのであれば、

 収入が減ったり(例えばリストラや業績不振によるボーナスカットなど)、病気になった場合に自己破産に追い込まれるリスクを何十年も負う

のです。それならリスクを背負わずに、家賃を支払いながら頭金を貯める方が得策かも知れません。

 買い換えや建て替えの方達は、この辺りのリスクについて十分ご存じでしょうから、こういった方達が身近にいらっしゃれば、相談するのも良いでしょう。




 かっぱ達は5年近く待ちました。くれぐれもイケイケの不動産屋や営業マンに踊らされることのないように!



 もちろんローン破綻の危険が小さい場合はこの限りではありません。

 いざとなったら親が借金の肩代わりをしてくれることを期待できる、リストラや賃金カットの可能性が低い、年収が高く短期間での返済が可能、などの場合であれば一時的にオーバーローンの状態になっても問題はないと思います。



 親の支援などが当てにできないのなら、月々無理なく支払える金額から「建築額」を逆算すべきです。銀行が算出する支払い可能額などは当てになりません。限度額まで借りたら大変なことになります。



 不動産屋も、H.M.の営業マンも、銀行員も、返済計画が厳しいからもっと安いものした方が良いとか、家を建てるには時期尚早だとかは、誰もアドバイスしてくれません。

 彼らは土地が売れ、建築請負契約を結べ、住宅ローンの契約が取れることだけが関心事であり、その後施主がどうなろうと知ったことではないのです。

 自分を守れるのは自分しかいません。

 自分なりに算出した借り入れ限度額は最後まで堅持すべきです。





 ローンの借入金額に対する総支払額を計算すると次のとおりとなります(借入期間10年までは2.0%、20年までは2.8%、30年以上は3.0%の利率で計算)。

 左は返済額を、月々10万円・ボーナス50万円/年とした場合(1)。
 右は返済額を、月々10万円・ボーナス払いなしとした場合です(2)。

 借入額が2,000万円を超えると利子の負担は加速度的に増加します。



 建築費が100万や200万増えても返済期間が長期だと月々の支払額はそれ程増えないので実感が湧きにくいのですが、2000万円の借入額が2200万円になると、(1)の場合で307万円、(2)の場合で422万円支払い総額が増えます。

 住宅ローンを払い終わって、初めて家は自分たちのものとなります。
 ローン破綻のリスク回避のためだけではなく、金銭的にも借入額を抑えることは重要なのです。




(かっぱ亭レポート)

 年明けから1月7日までの温度変化です。
 (先週はとても忙しく、1月7日以降、現場に行っていないもので・・・)

 床下温度は一日約1℃ずつ上がっていますので、能力的にはまだ余裕があります。

 これに伴って一階リビングの温度も20℃前後になっていますが、二階や屋根裏部屋の温度はそれほど上がっていません。

 先週は冷え込みが厳しい日が続きましたので、どの程度の温度になっているか気になるところです。

最後までお読み頂きありがとうございました.クリックを頂けましたら更新の励みになります
にほんブログ村 住まいブログ 一戸建住宅へ

前のページへ | 次のページへ


nice!(2)  コメント(6)  トラックバック(0) 
共通テーマ:住宅

nice! 2

コメント 6

トーゴ

お忙しそうですね・・・。私の年末年始を見ているようです・・・。
ホントにローンは危険ですよね。特に銀行の口車はビックリします。でも以前の中古住宅購入時よりも審査は厳しくなってるし・・・。コワイコワイ。
・・・と、改築に加え、でっかいテレビを衝動買いした人が他人事のように言ってみました(苦笑)。
by トーゴ (2008-01-14 22:22) 

kappa

トーゴさん、

公私ともに時間がなく、一週間以上ブログを更新できませんでした。

既に一度ローンを完済されたトーゴさんなら、私以上にローンの危険性を語れるのではないでしょうか。

大型テレビ・・・
ウチは洗濯乾燥機を買ってしまいました。
引っ越し貧乏になりそうです。
by kappa (2008-01-15 01:54) 

さと

暇はあれど、ネット環境がない俺がきましたよ~。
ローンのことを考える度、ちょっと頭痛を感じる今日この頃です
by さと (2008-01-15 15:02) 

住宅ローン、びびりながら契約です。
数字、計算の方面は旦那に任せっ切りですが
やりくりは私・・・新生活は試行錯誤になりますね。

今回の記事、今まで読んだどのローン関係の解説より
わかりやすかったです。

ウチの場合、ホームメーカーが先ずウチの支払い能力を
さりげなく調査していました。こえーよー(笑)
by (2008-01-15 22:42) 

kappa

さとさん、

ネット環境の整備には結構時間が掛かるのですね。
でも新婚ほやほやでブログ三昧って、まずいかも。
今は記事を書き溜めて充電されたし!
by kappa (2008-01-17 01:00) 

kappa

ぺんたごんさん、

そうなんです。
びびりながら契約するのが普通ですよね。
でも、モデルハウスを訪れて営業マンのペースに乗って契約しちゃう例を結構見かけます。
支払い能力の調査も、親切なようでいて、
「この客からいくら引き出せるか」
を知るためだと思うと複雑な気持ちになります。
by kappa (2008-01-17 01:16) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

トラックバックの受付は締め切りました

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。