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ビルダー選定の重要性 [これから建てる人のために]

 予算を決め、要望が整理できたら、次はいよいよビルダー選定。 家づくりにおいて、施主が最も熟慮しなくてはならない部分です。
 はっきり言ってしまえば、

 ビルダーを決めたら、施主の役目は終了

です。契約した時点でどの程度の家が出来るのかはほぼ決まります。かっぱも含め、殆どの施主は工事をビルダーに一式請け負わせる契約を結びます。契約なのですから、「これこれこういう家を、いつまでに、いくらで建築する」ということが、契約時に書面に明示されているべきで、あとはビルダーが契約どおりに施工するだけです。

 そういう意味で、詳細は契約後に決定というのはおかしいのです。契約後に仕様を変更することは、「施主の都合による契約変更」となり、施主はビルダーの請求額に異議を唱えることはできません。

 尤もこれはある程度予算的な制約がある場合のことで、予算をふんだんに掛けられる場合はこの限りではありません。業界トップクラスのH.M.なら、お金さえ掛ければ大抵のことはできるでしょうから、どれを選んでも良いでしょう。

 もちろんビルダー選定にあたって検討する事項は、金銭的な面ばかりではありません。

・家の仕様が自分たちの望むレベルにあるか
・自分の望むテイストを持つ家を施工できる技術および経験があるか。
・自分たちの要望に対する理解と、それを実現しようとする意欲があるか。
・情報伝達にストレスを感じないか。
・対応が誠実で信頼できるか。
・職人の腕や、品質管理は確かか。
・アフターサービスは希望どおりか。

などの要素もあり、総合的にビルダーを見極める必要があります。

 ビルダーの体質を施主が変えることはできません。
 例えば、施主が几帳面な性格であっても、担当者やビルダー自体がアバウトなら、打合せで伝えたこちらの要望が現場に反映されていないとか、施工や納入品に間違いがあったりして、施主の心理面の負担も大きくなると思います。(間違いが起こるのは、施工図面作成後に施主が仕様を変更することが原因だったりもしますが)
 例え価格が安くても心理的な負担を伴うのは嫌だと思う方もいれば、最終的に望んだとおりになればある程度の間違いは大目に見るという方もいるでしょう。人それぞれ感じ方は違いますから、自分なりの基準と優先順位を決めて、家づくり全般についてビルダーを総合的に評価することが必要なのです。

 ここで、金額、仕様、アフターサービスなど、目に見える部分はビルダーから提示されるので、比較検討しやすいです。
 難しいのは見えない部分。
 自分の家づくりに携わる人達が、誠実で熱意を持ってやってくれるかどうかは、契約前は全く分かりません。辛うじて、営業担当の人柄だけは打合せの時に垣間見ることができ、ビルダーの選定に大きな影響を及ぼしたりします。
 しかし、家の出来を最も左右するのは大工さんです。例えローコストH.M.で建てたとしても、大工さんの腕が良ければ大手H.M.で建てた家より出来映えは良くなります。ですから家づくりを良くご存じで情報をお持ちの方は、地元の工務店で大工さんを指名して家を建てます。
 大工さんの腕は年期もそうですが、性格も大きく反映するそうです。時間を掛けてもきっちり仕事をしたいというタイプの大工さんは、工程管理が厳格なH.M.の仕事には向かない場合もあるようです。

 腕の良い大工さんに建ててもらうにはどうしたら良いか。
 これは腕の良い大工さんが働いている工務店を見つけるしかありません。しかしこういった工務店をどう見つけるのか。
 そもそも規模の大きいH.M.は下請け工務店をたくさん抱えていますので、携わる大工さんの数も多く、指名は不可能です。大工さんと直接話をして要望を伝えることを禁止しているH.M.さえあります。
 建築を直接請け負っている工務店を訪れて訊いても、「ウチの大工は皆大丈夫だよ」と言うだけでしょう。結局、既に建てた人の評判を聞いたりして、地道に情報を集めるしかないと思います。また完成見学会に何度か足を運べば、そのビルダーの大体のレベルが分かります。
 かっぱも大工さんを指名するには至りませんでしたが、色々なH.M.の完成見学会に行くと、大手、ローコストを問わず、細かい仕上がり具合が一軒一軒異なっていることは感じました(やはり大手とローコスト系では差があります)。

 ローコストH.M.の場合は工務店への下請け費が叩かれているので、大工さんの手間賃も安くなります。このため、それなりの仕事しかしない人と、手間賃が安くてもきちんとした仕事をする人がいて、工事の品質がばらつきます。良い人に当たればラッキーで、そうでなければちょっと大変です。尤も、多少施工が雑でも、構造体の部分は殆ど見えなくなってしまいますから、施工中に施主がチェックしなければ、完成後は分からないとは思います。その方が精神衛生上良いですし、ローコスト系であればローンの完済も早いでしょうから、20年~30年後には建て替えている可能性も高く、それ程完璧な仕上がりを求めなくても良いかも知れません。
 大手H.M.の場合、工事は下請け工務店に丸投げ、監督も現場に殆ど来ません(人によりますが)。しかし施工方法がマニュアル化されており、工務店は専属の場合が多いので品質のばらつきが少なくなります。大手H.M.のメリットは正にここにあります。同じモノを大量に生産し組み立てることによって、職人さんの腕に頼らなくても一定の品質が確保されるのです。

 ここで言う大手H.M.には、フランチャイズは含みません。フランチャイズ制を敷いているH.M.の家の品質は、工務店によってまちまちなので、契約しようとしている工務店の技術力を判断する必要があります。また名前は大手でも、気密・断熱性や耐震等級など、家の基本性能はローコストH.M.と同等というメーカーもあります。

 大手H.M.の家は、同じ内容の家を工務店で建築するより2~3割程高いのですが、優良工務店を探す手間が省けます。コスト・パフォーマンスを追求せず、予算が許すのなら、あるいは家づくりに時間を掛けられないなら、施主にとって手軽で確実な選択と言えるでしょう。
 実際問題として、貴重な休日の時間を家についての勉強や情報収集に費やしてまでコスパを追求するよりも、多少割高でもその時間を仕事なり趣味なりに使った方が良いという考え方もあると思います。

 施工の品質を担保するなら、建築設計事務所という選択肢もあります。建築士自らが施主の立場に立ってしっかりと施工を管理するのであれば安心ですし、それまで施工実績があった工務店の腕もご存じだと思います。問題は、事務所の仕事内容と最終的な金額が判断し難いことです。H.M.の営業と異なり建築士はある意味「先生」で、施主との上下関係が微妙な感じになる場合があります。また、予算をコントロールしつつ、施主の要望を満たすには、相当な建築経験が必要です。意匠設計だけでなく強度を考慮した設計ができるか、コストコントロールする力を持っているか、現場に頻繁に出向いて工務店を管理できるのか、意志決定権は施主にあるということを認識しているか(施主の了解を取らないで工事内容を変更されないか)、などについてチェックが必要です。こういった情報はネットでは拾えず、口コミに頼らざるを得ませんので、工務店以上に敷居が高く感じられると思います。しかし良い事務所を見つけられれば、H.M.では難しいオーダーメイドの家が大手H.M.より安く建てられます。

 かっぱが検討した2×4ビルダーで、最もコスパが良かったのはある建築設計事務所でしたが、最初は口コミでその存在を知りました。(以前の記事で記したように、今はもう無いのですが)
 そう言えばかっぱ亭を建てたBeハウスも建築設計事務所でした。本気で探せば希望に叶う事務所は必ずあると思います。ただし建築設計事務所は施工者ではありませんので、総額が把握しにくいです。H.M.なら坪単価とオプションと固定費用を足せば済むのですが、建築設計事務所だと材料と手間の積み上げが必要な上、入札方式であれば工務店の見積もりが必要となります。その辺り、経験豊富な方なら、大体の金額を予想してもらえます。


 ビルダーの選定に当たっては、価格、プラン、設備、デザインなどのほか、この様な目に見えない施工品質のことも、頭に入れておくことが望ましいです。

 そうは言っても、接触したビルダー全てに対してこれを行うのは大変な労力を必要とします。やはり早い段階で、自分たちの要望に沿ったビルダーをある程度選定できれば、その後の検討が楽になります。

 その第一段階選抜。

 これは自分の要望の中で、最も拘りのある条件による選抜です。

 例えばその条件が、「プロヴァンス風の家」であればプロヴァンス風の家の施工経験があるビルダーを選ぶ、「RCの家」であればRC構造で施工しているビルダーを選ぶ、「暖かい家」であれば気密性・断熱性が優れたビルダーを選ぶ、「有名どころで建築」であれば名の知れた大手H.M.を選ぶ、などです。
 かっぱ亭の場合は「予算」が最も厳しい制約条件だったので、2,000万円以内で建築できるビルダーが、最初の検討対象となりました。(これを探すのが大変だったのですが・・・)

 この段階で選抜が出来るのは、自分たちの要望が自覚できているからです。具体的な要望が固まっていないまま、いきなりモデルハウスに行くと時間が掛かりすぎ、効率が良くありません。比較対象となるビルダーが増えるほど、1社が受注できる確率が下がりますので、基本的にビルダーは他との比較検討はなるべくして欲しくないというスタンスで営業を掛けてきます。これは、なるべく他社を廻られないように、契約までに時間的な余裕を与えないということで、必ずと言って良いほど期限を切って値引きなどの条件を提示してきます。このため何となく気持ちが焦り、工務店や建築設計事務所など、より広い範囲でビルダーを検討することなく契約に至ってしまいます。
 要望が固まっていないのであれば、モデルハウスを訪れる前に、なぜ家を建てるのか?家にかける予算、で記したような事項について、まずは書籍やネットなどで情報を収集・検討しておくべきでしょう。

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わかって建築家

全くその通りです。

選択肢が多すぎる中、目先のことしか考えないというか 考えられない消費者の方々に対し、アドバイスをして、良い選択ができるよう斡旋できればとも思います。

ハウスメーカーだって悪というわけではないのですから・・・・・

とはいえ、自分の業界のこともあるので、HMを選ぶというのは少し残念ではありますが・・・・
by わかって建築家 (2008-07-04 09:41) 

たいせい

 良くあるのが、発注金額が確定してローンの申し込みを済ませ詳細打ち合わせに入ってからの仕様変更で粘土瓦が新生屋根材に変わることです。
 設備機器やお風呂などのグレードを上げたく成ってしまって、予算不足から簡単に仕様を落とされてしまう粘土瓦業界は悲しいです。
 建物の三大要素は「基礎」と「構造」と、それを気候変化から守る「屋根外装」で、それがしっかりしていないとリフォームもまともに出来ないのに...。

 既知の記事かと思いますが、トラックバックを送ることをお許し下さい。

PS.
 本来住宅は「買うもの」ではなく「建てるもの」で、どんな予算でもそれらしいモノを立てることが出来ます。
 結局はどのビルダーを選ぶかが最大のポイントだと、私も思います。
by たいせい (2008-07-04 11:58) 

maco*

ご訪問&コメントありがとうございました。
応援ダブルポチッ♪
by maco* (2008-07-04 23:57) 

kappa

わかって建築家さん、

家をどこに建ててもらうかを検討する時に、H.M.のモデルハウスに行くことしかしない施主が何と多いことか・・・
しかしそれでは型にはまった家しか作れず、しかも高い。
それ以外の選択肢がたくさんあり、同等の家が安く建てられること、H.M.では得られない目から鱗の提案をして頂けること、などをもっと広く知ってもらいたいと思っています。

nice!ありがとうございました。
 
by kappa (2008-07-06 08:55) 

kappa

たいせいさん、

設備をグレードアップさせた見返りに、家の耐久性・メンテナンス製に関わる基本仕様を落としてしまう・・・
でも殆どの施主が、瓦をスレートに変えることに、どれ程のデメリットがあるのかを認識していないのだと思います。またそれを勧める営業も、施主のことを真剣に考えていないのでしょう。
施主としては一度契約してしまうと、H.M.の言うことを信じざるを得ない、いや信じたいという心理状態に陥り、情報を集め自分で判断しようとしなくなってしまうのです。
地道な情報発信しか手はないのかも知れません。

nice!ありがとうございました。
 
by kappa (2008-07-06 09:06) 

kappa

maco*さん、

コメント&ポチ&nice!ありがとうございます。
庭の様子も出来るだけアップして行きたいと思いますので、よろしくお願いします。
 
by kappa (2008-07-06 09:08) 

tsk

遅いコメントすみません。
消費者側の最大の落とし穴は、家を建てるのに何が良いものか、必要なものかを知らないことにあります。

さらに、これに日本の文化が入ってしかるべきなのですが、よっぽどでない限り、そこまで頭はまわりません。本当はそれができなければ、日本独特の良いものを失っていきます。

どういう家が良いのか教えてもらうこともまずありません。
ドイツなんかはどういう家が必要なのかを学校で教えてもらうようです。

Kappaさんがおっしゃっているように、最後は実際に建てる大工さんなのですが、そこまで見えて選択している人は少ないです。

経験上は、家を建てると決まってから勉強しても、情報のありすぎ、商業主義の見分けがつかないなど、厳しい条件にあります。
誰に相談するのか?も難しい状況にあります。

これも、kappaさんがおっしゃっていますが、ある程度のHMを使って平均点を取るというのもありですし、なにかにこだわったらいばらの道かもしれません。

ただ、それらの大変なことをやるというのが家づくりの楽しみでもあります。

最近のエコと高耐久という言葉がどうも、怪しくてなりません。
by tsk (2008-07-17 01:50) 

kappa

tskさん、

「それらの大変なことをやるというのが家づくりの楽しみ」
全く同感です。色々な制約の中で、最大限自分の要望を満たす家を作るという作業は、大変でしたがやり甲斐もありました(まあ実際にしたのはビルダー選定と仕様決めくらいでしたが)。大手H.M.しか検討していなければ、この達成感は味わえないと思います。

「エコ」については思うところがあるのですが、個人の処し方としては、問題の本質を見極め、踊らされないことが大切だと思います。
特に太陽光発電は・・・

nice!ありがとうございました。

by kappa (2008-07-17 23:18) 

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