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オプション価格と原価率 [これから建てる人のために]

 前回の記事(住宅の価格構造)で頂いたコメントから、施主が得られる資料からH.M.の原価率を類推する難しさを感じました。やはり業界の中にいないと本当のところは見えてこないのでしょう。
 しかし、家全体の原価率が分からなくても、仕入れ値を推定できる一部の材料や労務については、H.M.の見積書から大体の原価率を把握することができそうです。
 H.M.の見積書を見ると、本体標準仕様はどんぶり勘定で何に幾ら掛かっているかは全く分からないのですが、オプションについては個別に見積価格が提示されています。この「お客様出し価格」は、

 お客様出し価格 = 仕入れ値 / 原価率

で算出されているはずなので、「仕入れ値」を「お客様出し価格」で除せば、原価率を求めることができます。かっぱが少し計算してみた例を以下に示します。

・大手H.M.

 照明のオプション料金は定価の70~80%とのこと。仕入れ値は定価の40%ほどなので、原価率は50~57%程度。因みにネットショップでは定価の50%程度で売られており、ショップの粗利は25%程度だということが分かります。
 エアコンはH.M.を通して注文するとほぼ定価。ネットショップだと定価の65%程度。ショップの粗利を25%とすると仕入れ値は定価の49%と推定され、原価率は49%
 エアコン配管(露出)はH.M.に頼むと62,000円、電気店に直接頼むと22,000円、原価率は35%
 トイレはH.M.を通して注文するとほぼ定価。ネットショップだと定価の60%程度。ショップの粗利を25%とすると仕入れ値は定価の45%と推定され、原価率は45%

 これらより大手H.M.の原価率は50%前後であると推定されます。

参考


・ローコストH.M.

 ローコストH.M.は外注労務費を叩いているので原価を推し量ることができません。そのため住宅設備から類推します。
 照明をH.M.に頼むと定価の60~65%程度、仕入れ値は40%とすると、原価率は62~67%
 二つ口コンセント2,900円、仕入れ値は1,800円で、原価率は62%
 LANスリーブ7,000円、仕入れ値は5,000円で、原価率は71%
 仕入れ値はBeハウス見積書の原価を参照にしたのでもう少し安い可能性あり

 これらよりローコストH.M.の原価率は60~70%であると推定されます。

参考


 ここで示したのはオプション設備の原価率です。
 家作りに使われる材料や労務費は、その種類を問わず、ほぼ一定の原価率によって管理されていると仮定すれば、この値は家全体の原価率に近いと言うことができます。
 ローコストH.M.は本体価格を安く設定している反面、オプションの利益率を高く設定していると言われていますので、全体の原価率はもう少し高い可能性があります。

 施主の立場としては、原価率が高いに超したことはありません。ただ、同じ品物でも仕入れ値はビルダーによって異なるでしょうし、原価が同じであってもビルダーによって性能・仕様には差が出ますので、やはりトータルで比較検討することが肝要かと思います。

 原価率を把握する利点は、H.M.の普通のプランにはない特別な施工を依頼したいとき、原価にどの程度の金額が上乗せされるのかを予想できることです。特別な施工とは、例えばドッグランを作りたいとか、薪ストーブを入れたいとか、リビングを八角形にしたいとか・・・、もっと身近な例だと、天井・壁・床に無垢材を張るとか、螺旋階段やデザイン階段をリビングに設けるとか、スキップフロアにする、とか色々あります。「パーツをカタログから選ぶだけ」ではなく、このような造作工事を家作りに取り入れることは注文住宅の醍醐味だと思います。このような工事の原価は元請けがどこであろうとほぼ同じです。しかし、原価に25%の経費を上乗せする工務店(原価率80%)と、100%を上乗せする大手H.M.(原価率50%)とでは、施主が支払う金額に大きな開きが出てしまいます(造作工事は技術を持つ職人さんでないとできませんので、ローコストH.M.では施工そのものを断られるかも知れません)。ビルダー選定にはこのような事情も考慮に入れる必要があります。

 このことはプランニングにも影響します。大手H.M.はプレハブの規格から外れるようなプランは高額になるため提案しないので、結果として各社似通ったプランになります。自分たちの要望や使いやすい間取りを追求するのであれば、そのような制約のない建築設計事務所などにもプランを依頼してみることをお勧めします。結構、目から鱗的な提案があり、びっくりすること請け合いです。

話が原価率から外れてしまいましたが、最後までお読み頂きありがとうございました.クリックを頂けましたら更新の励みになります
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たいせい

 原価の類推というのは本当に難しいですね。
 メーカーの立場で言わせていただくと、価格設定の際に細目まで分解されて評価されてしまいやすいオプションなどは、お客様に突っ込まれやすいので低めの利幅で価格設定する場合が多いです。
 ただこれは品目や会社の利益に対する考え方(価格政策)にも依り、本体よを最小限の構成にしておきオプションで利益を上げる考え方も、本体で利益を確保しオプションは最小限の管理費だけが取れればよいとの考え方もあり一概に評価するのは本当に難しいですね。
 渡井の場合の根拠は「勘」が根拠でお恥ずかしい限りなのですが、やはり40%前後ではないかと感じており、その点ではだいたい良い線ではないかと感じました。

 大手HMとローコストHMの違いは私の聞いている範囲では「段取り」の違いで、一口に屋根工事と言っても含まれる範囲が大きく違っている場合もままあります。
 大手の場合は間接工数多く使い、同じ工事でも外注業者の作業が効率的に進められるように考え抜かれていますが、ローコストHMはほとんど外注に丸投げで、本来間接工数として原価に積み上げられるはずの部分の工数を外注に依存している場合もあり、外注価格は同じでも工事は同じではないという印象も持っています。

 またプランについてなのですが、HMは大手・ローコストのいずれも床面積当たりの単価を下げるべく基本的に総二階のプランをベースにして、出窓やベランダ・玄関回りの造作で変化をつけている場合が大半だと思います。
 恐らくこの当たりにも今後触れられるのではないかと思いますが、総二階建てを基準にしたプランなら、街場の大工さんや工務店でも安く建てることは可能ですし、建築設計事務所に設計&監理をお願いしてもHMより安く確かな家が建つと思っています。
by たいせい (2008-08-06 10:03) 

おっちゃん

隊長!

かなり、数字が精査されてきました。。。
えーと 今日の記事の中で 少し 曖昧な部分を書きます。

経費についてです。
工事するに当たり、大手HMは監督が2日に一度程度現場に来て
進行を見ます。
年間にすると20~30棟程度の完成高でしょうか?
ローコストHMの場合、酷い時で2週間、常識的に週二度程度だと思います。
年間にすると40~50位?なのでしょうか
どちらにしても、技術職で会社の管理経費を入れると原価でも1500万円はかかります。

それと、営業経費です。
大手HMなら一週間に一度は工事中もイケメンの営業が来るようです。
ローコストの場合は、呼ばないと来ませんが・・・

大手の場合、営業経費100万程度はかけても良い!
落とせそうなら一ヶ月毎日通えますね。。。
そんな話を聞いたことがあります。

上記の原価率の数字の中で 大手HMの50には現場管理費が入っていなくて
ローコストの60~70には入っている。。。と考えて 良いと思います。

その上で、営業経費は どちらにも入っていない!

ちなみに地元ビルダーはと申しますと。。。毎日現場に通わせます。
良くがんばっても年間10等程度でしょうか?規格住宅ではない場合、職人に対する指示が毎日必要です。
大工さん系のビルダーは大工さんが自分で管理する場合が多いでしょう。

情けない話ですが、原価率80%では納まりません。。。
それでも頑張り続けます。


by おっちゃん (2008-08-06 14:36) 

kappa

たいせいさん、

確かに原価率の類推は難しいです。
それに原価が同じでも、できる家はビルダーによってかなり異なるでしょうし、やはり「全体で比較」するのが良いのではないかと思っています。
(私はもう建ててしまっていますが・・・)

nice!ありがとうございました。
 
by kappa (2008-08-08 22:18) 

kappa

おっちゃんさん、

在来工法最大手H.M.の現場監督は、下請けに画像を送信させ、写真で管理し、現場には行かなくなったそうです。
何だかゼネコンが下請けを管理するやり方と似ています。
建築請負費の50%をピンハネして下請けに出し、現場にも行かない・・・
それでもそのH.M.が売り上げを伸ばしている現実。
宣伝の効果も大きいのでしょうが、何だかなぁって思います。
 
by kappa (2008-08-08 22:35) 

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