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蓄熱暖房の効果と限界 [完成後]

 1月14日までの一週間、かっぱ亭の温度変化は次のとおりでした。

 電気蓄熱式床下暖房により床下温度は40℃まで上昇しましたが、それ以上は上がらず頭打ちの状態。

 これは一日の発熱量と放熱量が平衡状態に達していることを示しています。

 この状態での一階リビングの床面温度は20~22℃程度。

 二階と小屋裏の床面温度は10~16℃の範囲です。



 そこで1月8日から1月15日までの一週間で、どの程度の熱量が室内から外部に漏れたかを計算してみます。


 かっぱ亭のQ値は換気によるロスも含めると2.1です。

 Q値に床面積と内外温度差を掛けた値が、単位時間あたりに失われる熱量となります。

 ここでは室内温度の平均を、

 一階の温度×0.5+二階の温度×0.25+屋根裏部屋の温度×0.25

として、外気温との差を一時間毎に求めて失われる熱量を計算し、これを一週間分積算しました。

 計算の結果、一週間で失われた熱量は611kwhで、一日あたりの平均は87.2kwhでした。

 これに対して、深夜時間帯の消費電力量は一週間で632kwh、一日あたり90.3kwhでした。

 24時間換気で消費する電力量は無視して、全てが蓄熱暖房機に使われたと考えると、電気蓄熱式蓄熱暖房の運転効率(電気を室内の温度上昇に変換する効率)は、87.2/90.3=97%になります。

 私見ですが、この数値は少し高すぎると思います。

 電気蓄熱式床下暖房はスラブを蓄熱体としますので、断熱材は貼ってあるものの、スラブ底面や基礎外周部から一定の熱が逃げるので、室内に設置する蓄熱暖房機より効率はやや落ちるはずです。

 効率が高めに計算された原因は、日射による熱の取得を考慮していないためと思われます。ただ、一階はシャッターを閉めっぱなし、二階もLow-Eガラスなので付加される熱量はそれ程多くないとは思います。
 実際に日光が当たっている床面を歩いてみても、暖かいとは感じません(ちょっと悲しい)。

 まあ90%以上の効率はありそうで、計算の根拠としたQ値2.1という数字が概ね正しいことが分かります。
 暖房費は家のQ値に比例しますから、エコキュート式床暖房などの高効率の機器を使わない限り、蓄熱暖房を使用すればQ値が1.4の家ではかっぱ亭と比べて暖房費が2/3に、Q値が3.2の家では暖房費が1.5倍になります。



 高気密・高断熱という言葉には定義がなく、次世代省エネ基準(温熱等級4)に準拠していなくても高気密・高断熱を謳っているH.M.も見られます。しかしC値・Q値が高いと冷暖房費に歴然とした差が出ますので、光熱費を気にされるのでしたら家のC値・Q値(どの程度の値を保証するのか)は契約前に必ず確認しておくべきだと思います。
 できれば温熱等級4などの規定を契約書に盛り込むことが望ましいです(かっぱはそうしました)。




 話をかっぱ亭に戻します。

 人が住んでおらず生活熱が発生しない状況ですが、一階の一週間の平均温度は21.5℃で室温は概ね20℃以上に保たれています。玄関を開けるとほんわり暖かい感じがし、どの部屋でも床面温度はほぼ均一で快適です(特に洗面脱衣所が暖かいのは嬉しい)。

 これに対して二階と小屋裏の床面温度は10~16℃の範囲で平均は二階が14.0℃、屋根裏部屋が13.6℃でした。床面温度が10℃のときに屋根裏部屋を歩くと、靴下を履いていても足の裏が冷たく感じ、はっきり言って寒いです。

 男のロマンも凍りつき、極寒の地の収容所・・・   カミさんの洋裁スペースは一階にあり床ガラリから暖気が立ちのぼっています。   この差はなに?




 家の中の温度が均一にならないのは熱の対流が十分でないからで、輻射や伝導だけでは熱源から遠いほど温度が低くなるのは当然です。

 一週間の平均外気温は4.5℃であるのに対し、室内の平均温度は17.6℃。

 もう少し平均室温を高くしたいところですが、かっぱ亭の条件ではこれが限界です。



 平均が17.6℃であっても一階の温度が21.5℃なら、リビングに居る分には問題はありません。

 ただ、家の中に温度が低い箇所がある場合、結露が懸念されます。

 屋根裏部屋において一週間で最も温度が低かったときの値は9.5℃。

 気温9.5℃で結露が発生する水蒸気圧は11.9hPaで、気温20℃で相対湿度51%、22℃では45%です。

 つまり一階の室温が20℃のとき、湿度を51%以下に保たないと、温度が9.5℃の屋根裏部屋では結露が発生する可能性があるということです。

 関東地方の冬場の湿度は大変低く、近傍の測候所の一月の平均蒸気圧は4.8hPaです(一月の平均気温2.3℃に対する相対湿度は67%)。
 この空気が20℃になると相対湿度は21%です。このようなカラカラの空気が24時間換気によって、2時間で家中の空気を全て入れ換えるだけ入ってきますので、室内で相当量の水蒸気を発生させない限り、結露の心配はありません。

 しかし過乾燥は健康に良くないので、室内に洗濯物を干したり、加湿器を設置するのが普通で、室内の湿度はもっと高くなります。

 実際には生活熱により暖められた空気は吹き抜けを通じて上層階に上がりますし、補助暖房として二階でエアコンを使うでしょうから、二階や屋根裏部屋はもっと高い温度で推移し、結露の可能性はより小さくなると思いますが、どの程度温度が上昇するかは未知数です。
 住みだしてからの最初の冬は室内の温度ムラをチェックし、10℃を下回ったりするようなら結露を発生させないように湿度をコントロールする必要があるでしょう。



 電気式蓄熱暖房について現在の評価は、単体で全館暖房を行うには発熱量的に若干力不足ではありますが、一階については単体でも快適な温度を保てており、ロスもそれ程大きくなかったので合格点です。

 あとは二階の温度が低い点を生活熱等でどの程度補えるかと、外気温が更に下がった場合の室温がどうなるかで、もう暫く温度測定を続けてみます。

 いずれにせよ、厳寒期は電気代(かっぱ亭の試算では月二万円程度)を気にせずフル稼働させてこそ、十分な効果が見込める暖房機だと思います。





(かっぱ亭近況)

 外構工事が少しづつ進み、門ができつつあります。

 写真のレンガを新しく仕入れて頂いたのですが、表面がぼろぼろ崩れてしまう状態なので、最初に予定していた焦げレンガを使用することにしました(Beハウス・エクステリアさん、スミマセン)。

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コメント 6

イピオッカ

いつも貴重な情報有難うございます。
恐妻を説得し、我が家も床下暖房導入が決定しました(^^)/
今年はエアコンで過ごしてるのですが、
あの独特の熱気と足元が寒いのが耐えられないらしくて・・・
灯油高騰が幸いしました(笑)

いよいよ来週着工です!
by イピオッカ (2008-01-22 09:28) 

たいせい

 実際のデーターに基づいた、大変内容の濃い記事に感動しています。
 引き続き楽しみにしています。
by たいせい (2008-01-22 12:22) 

kappa

イビオッカさん、

おお!
遂にイビオッカさんもエナーテックを導入ですか。
床暖ほど顕著ではありまえんが、足元の暖かさは実感できます。
何より、風呂場も洗面所もトイレも暖かいっていうのが良いです。
確かに電気は食いますが、割引額も大きいので年間のランニングコストはかなり安く済みます。

来週着工なら雨が殆ど降らない時期ですから、床下に水がたまること無く、上棟できそうですね。
by kappa (2008-01-23 01:04) 

kappa

たいせいさん、

お褒め頂き恐縮です。
まだ住んでいなので住み心地はレポートできないのですが、暖房費とその効果を調べるには逆に好都合なので、記事にしてみたところです。
by kappa (2008-01-23 01:12) 

トーゴ

 さすが!いつもながらすばらしい分析!!住んでいない状態の家の温度を調べておく・・・というのは簡単なようで、実はなかなかできないコトだと思うのです。第一、手間がかかります。私だったら住んでいてもできない気がする・・・・・。
 ということで、Beハウスで建てている我が家も、めでたく来月初旬には住めるカタチになりそうです。データ分析はちょっと荷が重いので、私は「体感」でエナーテックの具合を記事にしようと思っています(笑)。
by トーゴ (2008-01-26 00:54) 

kappa

トーゴさん、

実は最近、現場での打合せがなく、温度のデータでも取りに行かないと、新居に行く口実がないってのもあります。 (#^.^#)

温度の話だけでは実のところどうなのか分かりませんので、「体感」レポート、期待しています。
by kappa (2008-01-26 17:31) 

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