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1000万円台で建てるために [これから建てる人のために]

 タイトルは大仰ですが、限りある予算を最大限に活用するにはどうすれば良いかについて記してみます。結局のところ家作りは、建てた本人の満足度が高ければ「正解」だと思います。価値観は人それぞれで、コストパフォーマンスを追求することが必ずしも満足度を上げるとは限りません。
 ただ、そうは言っても、予算が2000万円以内に限られるとなると、建築以外に使われる費用を極力小さくしないと、満足のいく家の規模や質を得ることは難しいでしょう。

 オプション価格と原価率で述べたように、大手H.M.の原価率が概ね50%程度とします。

080905①.gif

 図のように、H.M.→下請工務店→専門業者→職人さん という下請け構造において、それぞれの段階で20%の経費が差し引かれると、原価率は概ね50%になります。実際にはH.M.の経費はもっと大きく、下層ほど経費率は小さいのでしょうが、ここでは考慮に入れないことにします。

 住宅の質を維持したまま、建築請負費を下げるにはどうしたら良いか。

 それは極力中間マージンや経費を小さくすることです。

 例えば工務店の直接発注すれば、同程度の家が2割ほど安く建てられるでしょう。

080905②.gif

 デザインや設計面で満足がいかなければ、建築設計事務所を通す方法もあります。
 この場合事務所の経費が加算されますが、工務店の経費で行われていた意匠設計、図面作成、(必要に応じて)構造計算、申請業務等を肩代わりするので、工務店の経費率は少し下がります。

080905③.gif

 建築設計事務所に依頼しても経費を下げられるのは分離発注。この場合、監督は建築士自らが行うか、フリーの監督に依頼することになります。

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 これ以上経費を下げようと思うと、施主自らが専門業者に直接依頼する分離発注という方法があります。さらに究極の方法は施主自らが建築してしまうセルフビルド。これなら原価率100%を達成できます。
 しかしこれらができるのは技術と時間がある人に限られ、一般の施主には無理な話です。

 結局、施主が依頼した相手が、直接専門業者に作業を依頼したり、資材を仕入れたりするという形態が、最もコストの無駄がない形だと言え、ローコストH.M.もこの形式をとっています。

 ここで良く見ると②と④が同じ形態であることに気がつきます。しかし②の場合は建築に対する最終的な責任を工務店が取るのに対して、④は責任の所在が建築士にあるのか個々の専門業者にあるのか今ひとつ明確ではなく、ちょっと不安になります。

 そこで分離発注ではなく、建築設計事務所が建築請負契約の相手方となり、専門業者への発注は内部で行えば、施主は不具合の是正やアフターサービスを建築設計事務所に求めることができ、安心です。

080905⑤.gif

 これは建築設計事務所の工務店化とも言えますが、このような形式であれば無駄なコストを掛けずに、(デザイナーズハウスと言うのはちょっと大げさですが)質の高いプランを実現することができます。


 tただし、会社の規模をかなり大きくしなければならないので、このような形態をとっている建築設計事務所は多くない思います。予算が比較的少なく、重視する項目が「住宅設備」である場合は、迷わずローコストH.M.を選ぶべきでしょう。

 かっぱ達の場合、予算の次に重視するものはプラン(=家の使い勝手)であり、家の性能にも少し拘ったので、最終的に候補に残ったビルダーは、建築設計事務所2社と、中堅のH.M.1社でしたが、建築をお願いしたBeハウス・アクトは正にこの形態を持つ建築設計事務所でした。
 もちろん会社が大きくなればある程度の受注が続かないと会社を維持できません。営業が居ない、モデルハウスを持たないということは、余計なコストが掛からないので施主にとってはコスト・パフォーマンスが良くなると言う利点があります。しかし、会社にとっては広告や口コミ、完成見学会で新規の顧客を開拓しなければならないということでもあり、そのような中で会社が維持(あるいは成長)しているということは、良い家をリーズナブルに作るという姿勢が一定の支持を得ていると言えるのでしょう。

 限られた予算内での建築を目指す方で、重視する項目が住宅設備以外にあるのなら、建築設計事務所や工務店を、検討の対象に含めるべきだと思います。数が多いので家作りの姿勢が共感できる会社を探すまでには時間が掛かるかも知れませんが、その価値は十分あります。


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オプション価格と原価率 [これから建てる人のために]

 前回の記事(住宅の価格構造)で頂いたコメントから、施主が得られる資料からH.M.の原価率を類推する難しさを感じました。やはり業界の中にいないと本当のところは見えてこないのでしょう。
 しかし、家全体の原価率が分からなくても、仕入れ値を推定できる一部の材料や労務については、H.M.の見積書から大体の原価率を把握することができそうです。
 H.M.の見積書を見ると、本体標準仕様はどんぶり勘定で何に幾ら掛かっているかは全く分からないのですが、オプションについては個別に見積価格が提示されています。この「お客様出し価格」は、

 お客様出し価格 = 仕入れ値 / 原価率

で算出されているはずなので、「仕入れ値」を「お客様出し価格」で除せば、原価率を求めることができます。かっぱが少し計算してみた例を以下に示します。

・大手H.M.

 照明のオプション料金は定価の70~80%とのこと。仕入れ値は定価の40%ほどなので、原価率は50~57%程度。因みにネットショップでは定価の50%程度で売られており、ショップの粗利は25%程度だということが分かります。
 エアコンはH.M.を通して注文するとほぼ定価。ネットショップだと定価の65%程度。ショップの粗利を25%とすると仕入れ値は定価の49%と推定され、原価率は49%
 エアコン配管(露出)はH.M.に頼むと62,000円、電気店に直接頼むと22,000円、原価率は35%
 トイレはH.M.を通して注文するとほぼ定価。ネットショップだと定価の60%程度。ショップの粗利を25%とすると仕入れ値は定価の45%と推定され、原価率は45%

 これらより大手H.M.の原価率は50%前後であると推定されます。

参考


・ローコストH.M.

 ローコストH.M.は外注労務費を叩いているので原価を推し量ることができません。そのため住宅設備から類推します。
 照明をH.M.に頼むと定価の60~65%程度、仕入れ値は40%とすると、原価率は62~67%
 二つ口コンセント2,900円、仕入れ値は1,800円で、原価率は62%
 LANスリーブ7,000円、仕入れ値は5,000円で、原価率は71%
 仕入れ値はBeハウス見積書の原価を参照にしたのでもう少し安い可能性あり

 これらよりローコストH.M.の原価率は60~70%であると推定されます。

参考


 ここで示したのはオプション設備の原価率です。
 家作りに使われる材料や労務費は、その種類を問わず、ほぼ一定の原価率によって管理されていると仮定すれば、この値は家全体の原価率に近いと言うことができます。
 ローコストH.M.は本体価格を安く設定している反面、オプションの利益率を高く設定していると言われていますので、全体の原価率はもう少し高い可能性があります。

 施主の立場としては、原価率が高いに超したことはありません。ただ、同じ品物でも仕入れ値はビルダーによって異なるでしょうし、原価が同じであってもビルダーによって性能・仕様には差が出ますので、やはりトータルで比較検討することが肝要かと思います。

 原価率を把握する利点は、H.M.の普通のプランにはない特別な施工を依頼したいとき、原価にどの程度の金額が上乗せされるのかを予想できることです。特別な施工とは、例えばドッグランを作りたいとか、薪ストーブを入れたいとか、リビングを八角形にしたいとか・・・、もっと身近な例だと、天井・壁・床に無垢材を張るとか、螺旋階段やデザイン階段をリビングに設けるとか、スキップフロアにする、とか色々あります。「パーツをカタログから選ぶだけ」ではなく、このような造作工事を家作りに取り入れることは注文住宅の醍醐味だと思います。このような工事の原価は元請けがどこであろうとほぼ同じです。しかし、原価に25%の経費を上乗せする工務店(原価率80%)と、100%を上乗せする大手H.M.(原価率50%)とでは、施主が支払う金額に大きな開きが出てしまいます(造作工事は技術を持つ職人さんでないとできませんので、ローコストH.M.では施工そのものを断られるかも知れません)。ビルダー選定にはこのような事情も考慮に入れる必要があります。

 このことはプランニングにも影響します。大手H.M.はプレハブの規格から外れるようなプランは高額になるため提案しないので、結果として各社似通ったプランになります。自分たちの要望や使いやすい間取りを追求するのであれば、そのような制約のない建築設計事務所などにもプランを依頼してみることをお勧めします。結構、目から鱗的な提案があり、びっくりすること請け合いです。

話が原価率から外れてしまいましたが、最後までお読み頂きありがとうございました.クリックを頂けましたら更新の励みになります
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住宅の価格構造 [これから建てる人のために]

 以前の記事(それでもやっぱり坪単価)で住宅価格の相場について記しました。

 このとき記したのは全国展開している大手H.M.とローコストH.M.についてです。両者の機能的な差は、温熱等級を例にとれば、前者が4、後者が3です。これに対して坪単価は前者が75万円前後、後者が50万円前後と、20万円以上の差があり、40坪の家であれば約1,000万円の価格差です。
 使用する部材に違いはあれど、住宅設備や材料の仕入れ値が定価の半値以下であること、大手H.M.の家の性能は基準をクリアする程度のレベルで、それほど高くはないことを考え合わせれば、この価格差には驚くばかりです。

 40坪の家に3,000万円出すのなら・・・  ウチならばもっと性能や造りの良い家を安く建てられる。 街の工務店の声が聞こえてくるようです。実際、同程度の家を工務店で建てればかなり安くなるとは、よく言われています。

 大手H.M.の殆どは大きな工場を持っており、ユニット化やプレハブ化、大量生産などによって価格上のメリットを有しているはずです。実際、大手H.M.がプレハブ住宅を作り出した頃は、低価格が武器で売り上げを伸ばしました。それなのになぜ性能価格比が低下してしまったのか。

 一つめの理由は、住宅建築ではスケールメリットが生かせないこと。

 そもそも大量生産によるコスト低減は、「同じモノをたくさんの顧客が購入する」ことによって達成されます。しかしH.M.は多様化と高級化への道を歩み出し、大量生産のスケールメリットを打ち消してしまっているのです。
(大量生産でコストが下げていれば、必然的に顧客の選べる選択肢は狭まるはずで、標準仕様で選べる部材が多いH.M.は、その分価格に上乗せされていると考えるべきです。反面、建売住宅は同じ部材を大量に使用でき、スケールメリットが生きますので、注文住宅と比較して割安になります。)

 二つめの理由は、下請けの重層構造。

 大手H.M.の損益計算書などを見ると、建築請負費の約50%を下請けに投げています。一次下請けの工務店はその仕事をそれぞれの専門業者に孫請けさせます。下請けの工務店や、孫請けの専門業者も管理費等の粗利が必要ですから、家作りに使われる費用は仕事が取り次がれる度に小さくなっていきます。

 このように、施工を下請けに投げることはコストアップに繋がります。自社に施工部隊を擁して工事を行えば、確実にコストは下がりますが、受注が落ち込んだときの施工部隊の維持費が負担になります。経営戦略上は、会社本体をなるべくスリムにしておくことが望ましく、最終的には「何もしなくても儲かる」システムが確立されれば理想的ですが、さすがにそれは難しいので、営業と手配に特化したのが現在の形態なのです。

 なぜこのような業務形態をとるのか。

 それは顧客のニーズが「性能の良い既製品を安く買いたい」ではなく、「せっかく建てるのなら多少割高でも良いから自分達の要望を通したい」という方向にあるからです。契約を勝ち取るためには顧客のニーズを満たした提案をする必要があり、そのために親身な相談相手としての営業マンが必要なのです。

 もちろんそれ以外のニーズを持つ顧客もいます。例えばプレハブには間取りの制限がありますので、「凝った構造にしたい」人は建築設計事務所に、「性能を追求したい」人はフランチャイズに、「安い家が欲しい」人はローコストH.M.に、「木の家に拘りたい」人や「安くて性能の良い家が欲しい」人は工務店に流れますが、数は少ないので顧客の対象から外しても問題にはなりません。



 住宅のコストをアップさせている3つめの要因は販売管理費です。

営業が業務の主力であるならば、そのための経費が嵩むのは当然で、営業マンの給与、広告宣伝費、モデルハウス維持費などによって、建築請負費は押し上げられます。
 施主が支払う建築請負費がどう使われるかをH.M.の損益計算書を参考にして、図示してみました。
原価率.gif

 大手H.M.では建築請負費の実に20%強が販売管理と営業利益に費やされます。また大手H.M.の従業員の半数以上は営業職です。これらの予算配分、人員配置を見ても分かるとおり、大手H.M.の仕事は家を作ることではなく、家という商品を売ることだと分かります。
 簡単に言えば3,000万円で契約した場合、600万円以上を営業マンの給与・広告宣伝・モデルハウスなどに支払っていることになります。

 因みに大手になるほど広告宣伝費が高くなるとよく言われますが、建築請負価格に占める広告宣伝費の割合は最大手で2%程度のようです。3,000万円の家でしたらその内60万円がテレビのCM放映に使われるといったところでしょう。

 施主が支払う建築請負費から、営業経費と利益を差し引くと80%弱が残ります。そこから家作りに使われる費用が支出されますが、全額ではありません。
 材料費は全体の20%程度を占めますが、H.M.の系列会社が間に入ると中間マージンが上乗せされます。
 また、営業以外の経費については、設計とかアフターサービスの部分が、施主に還元される費用になります。
 外注費の中には、工務店や専門業者の粗利も含まれますが、工務店は実質的な管理を行いますので管理費は必要ですし、施主が自ら施工するのでなければ、専門業者の粗利も必ず支払わなければならない経費です。これらは、家作りに使われる費用と考えて良いと思います。

 こうして考えると、実際に家作りに使われる費用は建築請負費の60~70%程度だと考えられます。
 もちろんこれは不必要な丸投げが行われないと仮定しての話で、大手H.M.と工務店の間に、中間マージンを取る系列会社などが入れば、さらに家作りに使われる費用は小さくなるでしょう。 (この辺りの実態は損益計算書などからは読み取れません)


 それでは下請け工務店に直接施工依頼すれば、大手H.M.の建築請負価格の60~70%で同じ仕様の家を建てることができるのでしょうか。


 残念ながらそれは難しそうです。

 大手H.M.は住宅をプレハブ化させており、工場で生産することによってコストを下げていますから、同じモノを現場で組み立てようとすると費用は割り増しになります。また軽量鉄骨のユニットなどはそもそも作れません。ここでもし特定のH.M.しか施工できない工法が要望の中で高い優先順位を持つのであれば、工務店は検討の対象外となるでしょう。
 しかし特に工法に拘りがないのであれば、大手H.M.以外の選択肢もあり得ます。耐震性や気密・断熱性などについて、同等以上の性能を持つ家を作る技術を持つ工務店は、たくさんあります。

 住宅設備や建具等はそれぞれのメーカーから仕入れますので、仕入れ値が若干割高いかも知れませんが、H.M.のオプション料金よりは安く揃えることができます。材料費・外注費が2割増、粗利が20%程度とすると、工務店は大手H.M.と同程度の性能・グレードの家を15%程度安く、坪単価で言うと65万円/坪程度で作れる計算になります。


 因みにローコストH.M.だとどうでしょうか。
 ローコストと言えども20%程度の販売促進費+営業利益は確保しているでしょうから、家に使われる費用は大きく見積もって建築請負費の80%(坪単価45万として40坪の家で1,440万円)となります。これは大手H.M.で使用される費用(40坪の家で2,040万円)の70%程度ですから、家のグレードが相当落ちるのは当然です(まあ、同じ土俵で比べること自体がおかしいのですが)。
 また設計費や人件費が削られているので、受けられるサービスが少なくなります。具体的には、打合せ回数や期間が制限される、既存の間取りのマイナーチェンジ程度のプラン提案しか受けられない、打合せに設計が同席しない、営業も工務もたくさんの物件を抱えすぎて間違いが多い、施工が丁寧とは言えない、アフターサービスが貧弱、等々です。
 この辺りを割り切ることができ、大手H.M.程の性能や設備のグレードを求めないのであれば、コストパフォーマンスは良いと思います。実際、予算額が1,800万円以下で40坪程度の家が欲しいのであれば、ローコストH.M.で建てるか、工務店で建てるかの選択になるでしょう。工務店のメリットは構造と施工の確かさ、ローコストH.M.のメリットは設備の良さですが、タ○ホームなどのローコストH.M.が売り上げを伸ばしている背景には、構造や施工など目に見えない部分より、目に見える設備を重視するいう施主が多いことが伺えます。
 関係者に知り合いがいて工務担当や大工さんを指名ができれば、当たり外れのあるローコストH.M.の施工を自分でチェックする必要がなくなり安心だと思います。



 話を戻して、ここではもう少し予算を掛けられる場合について。

 大手H.M.に対する工務店のメリットは価格、デメリットはデザイン・プランでしょう(例外は多々ありますが)。

 大手H.M.の家は基本的に、プレハブ特有の形状であるサイコロ組み合わせ型なのですが、最近の商品はデザイン面も配慮されている感じがします。大量生産品なので、本社の商品企画で優れたデザインを考案すれば、それを全ての商品に適用することができます。
 そのため営業所の設計士の力量が同程度でも、大手H.M.と工務店ではデザインに差が出る場合が往々にしてあります。この辺りは如何ともしがたい部分です。順位の高い要望項目がデザインであったり、長方形のパーツを組み合わせただけのプランに飽き足らない場合は、建築設計事務所に依頼するという方法もあります。

 これについては、稿を改めて触れたいと思います。


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